近年、マンガやイラストを販売するプラットフォームにおいて、クレジットカードによる決済が突然停止されるという事例が増えています。この問題は、一部のプラットフォームだけでなく、幅広いジャンルのサービスにも影響を与え、特にクリエイターやユーザーが不便を感じています。
では、なぜこのような事態が起きているのでしょうか?規制を推進していると見られる主体は誰なのでしょう?
さらに、クリエイターやプラットフォームがこれからどのように対応すればよいのでしょうか?
本記事では、現状を詳しく解説し、問題の背景を探るとともに、今後の対策についても考えていきます。
表現規制の現状と背景
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増え続ける決済停止の事例
2024年には、これまで普通に使えていたVISAやMASTERCARDが、複数のプラットフォームで突然使えなくなる事態が相次ぎました。
たとえば、有名な創作プラットフォーム「DLsite」や「ニコニコ」でも同様の問題が発生し、多くのクリエイターが困惑しています。このような事態により、クリエイターは販売機会を失い、特に海外からの収益が大幅に減少するという深刻な影響を受けています。
主な事例
- DLsite … 成人向けコンテンツを扱う一部の作品で決済停止
- ニコニコ … クレカ決済による一部サービスの利用制限
- マンガ図書館Z … 全面的な決済停止によるサイト運営の一時停止
規制の背後にある決済構造の複雑さ
一見すると「VISAやMASTERCARDが規制をしている」と思われがちですが、実際にはもっと複雑な仕組みがあります。クレジットカード決済は、次のような複数の企業が関わって成り立っています。
- アクワイアラー … 店舗やプラットフォームと契約する決済会社
- イシュア … クレジットカードの発行元
- 決済代行会社 … 店舗とアクワイアラーをつなぐ役割
これらの企業のどこかが規制を推進している可能性がありますが、現時点では特定されていません。このため、誰と交渉すれば規制を緩和できるのかも不明確です。
クリエイターやプラットフォームへの影響
売り上げ減少とコンテンツ停止の危機
クレジットカード決済の停止によって、最も大きな影響を受けるのはコンテンツを提供するクリエイターです。特に、海外からの収益に頼っているクリエイターにとって、VISAやMASTERCARDの使用不可は大打撃となります。以下は実際に報告された影響です。
影響の具体例
- 海外収益の減少 … 多くのクリエイターが収益の大半を海外ユーザーから得ていましたが、クレジットカード決済停止により売り上げが激減しています。
- コンテンツ停止のリスク … 「マンガ図書館Z」は決済代行会社からの契約解除によりサービス停止を余儀なくされました。クリエイターが作った作品を広く公開する場が失われています。
- ユーザーの離脱 … クレジットカード以外の決済手段を持たないユーザーは、プラットフォームを利用できなくなり、結果的に利用者減少を招いています。
被害を受けた業界の声
- 「突然の決済停止は本当に困る。海外ユーザーが利用できなくなり、売り上げは半分以下に減った」(クリエイターA)
- 「サービスを維持するために他の決済手段を模索しているが、すぐに対応できるものがない」(プラットフォーム運営者B)
「JCBなら大丈夫」ではない理由
一部では、「VISAやMASTERCARDが使えなくてもJCBを使えばよい」との声がありました。
しかし、これは解決策とは言えません。実際に、JCBを含む決済代行会社でも問題が発生しています。
JCBを利用した決済でも問題が発生する理由
- 決済代行会社の影響 … 決済代行会社は、複数のクレジットカードブランドを取り扱っているため、VISAやMASTERCARDの方針に引きずられる形でJCBも含めた決済を停止する場合があります。
- 一部プラットフォームでは一斉停止 … 「マンガ図書館Z」のケースでは、JCBを扱う決済代行会社から契約解除通告を受けたため、JCBでも決済が行えなくなりました。
ユーザーへの影響
- 決済手段の選択肢が減ることで、ユーザーの利便性が大きく損なわれています。
- 特に海外ユーザーは、JCBを利用している人が少なく、代替手段がないことから離脱するケースが多いです。
規制の背後にある問題
「児童ポルノ規制」と無関係なコンテンツも対象に
クレジットカード業者による規制は、「児童ポルノなどの違法コンテンツを排除するため」と説明されることがあります。
しかし、実際には違法性のない合法的なコンテンツや成人向け作品も規制対象になっています。
なぜ合法的なコンテンツが規制されるのか?
- 曖昧な規制基準 … クレジットカード業者や決済代行会社は、違法コンテンツの排除を目的としていると説明していますが、具体的な基準が公開されておらず、合法的な成人向けコンテンツまで影響を受けています。
- 過剰な自主規制 … 決済代行会社やプラットフォーム側が「違法性のあるコンテンツと誤解されるリスクを避けたい」という理由から、規制対象を広げすぎるケースが多いです。
巻き添えになったコンテンツの例
- 成人向けだが合法的に提供されているマンガやイラスト
- 健全な内容の創作物が、表現の一部だけを理由に規制されるケース
- コンテンツそのものではなく、販売ページの記載内容が問題視されるケース
誰と交渉すべきかが分からない現実
この問題を解決するには、規制を進めている主体と対話をすることが必要ですが、それが非常に難しい現状があります。規制の背後には複数の企業や組織が関わっており、交渉相手を特定することが困難です。
複雑な決済構造の問題
- 決済プロセスには、以下のような複数の企業が関与しています。
- アクワイアラー … 店舗やプラットフォームと契約している決済会社
- イシュア … クレジットカードを発行している銀行などの機関
- 決済代行会社 … 店舗やプラットフォームとアクワイアラーをつなぐ仲介業者
これらのいずれか、あるいは複数の段階で規制が加えられている可能性があり、誰が主導しているのかを突き止めるのは難しい状況です。
発言が食い違うVISA本社と日本法人
- 山田太郎議員がVISA本社を訪れた際、同社の副社長は「成人向けコンテンツそのものを規制する意図はない」と明言しました。
- 一方で、日本法人の代表取締役は「VISAのブランドを守るために規制が必要になる場合がある」と発言し、両者の間で認識が食い違っています。
問題解決の難しさ
- 世界中に存在する272社のアクワイアラーと243社のイシュアをすべて調査するのは現実的に不可能です。
- 圧力をかけている主体を特定するには、業界全体の協力と情報共有が不可欠です。
今後の対策と可能性
点から線へ、線から面へ – 問題解決への道筋
このような複雑な規制問題に対処するためには、個々のクリエイターやプラットフォームが単独で行動するのではなく、業界全体で連携して取り組むことが求められます。山田太郎議員をはじめとする一部の関係者がすでに行動を起こしていますが、今後はさらに多くの「点」をつないで「線」とし、より広範な「面」としての活動に発展させることが必要です。
連携の重要性
- 情報の共有 … 規制によって影響を受けている事例を集約し、どのような基準で規制されているのかを分析することが重要です。
- 業界団体の結成 … クリエイターやプラットフォームが集まり、共同で規制緩和を求める団体を設立することで、交渉力を高めることができます。
- 国際的な対話 … VISAやMASTERCARDなどのクレジットカード業者は国際企業であるため、国内だけでなく国際的な対話も必要になります。
具体的な取り組みの例
- 山田太郎議員がVISA本社を訪れたように、業界団体や議員が協力し、定期的な交渉を行う。
- プラットフォーム側が代替決済手段を模索し、ユーザーにとって使いやすい選択肢を増やす。
- SNSやメディアを通じて、規制問題について広く発信し、世論を形成する。
代替決済手段の模索
クレジットカード決済が使えない場合でも、他の手段で対応することでクリエイターやプラットフォームの収益を確保することが可能です。特に、近年普及しているデジタル決済手段や仮想通貨の活用は有効な選択肢となり得ます。
代替手段の選択肢
- デジタルウォレット … PayPalやApple Payなどの電子決済サービスは、すでに多くのプラットフォームで利用されています。
- 仮想通貨 … BitcoinやEthereumなどの仮想通貨を利用した決済は、規制の影響を受けにくく、国際的な取引にも適しています。
- 銀行振込 … クレジットカードを使わない決済方法として、銀行振込を導入することも考えられます。
メリットとデメリット
決済手段 | メリット | デメリット |
---|---|---|
デジタルウォレット | 簡単に導入でき、既存ユーザーも利用しやすい | 手数料が高い場合がある |
仮想通貨 | 規制の影響を受けにくく、国際的な取引が可能 | 価格変動が大きく、一般ユーザーにはなじみにくい |
銀行振込 | 安定した取引が可能で、手数料も比較的安い | 手続きが煩雑で、利用者にとって手間がかかる |
導入のポイント
- 複数の決済手段を組み合わせて導入することで、ユーザーの選択肢を増やし、利用者離れを防ぐ。
- 導入した決済手段について、わかりやすい説明をサイト上に掲載し、ユーザーが安心して利用できる環境を整える。
まとめと次のステップ
規制問題の現状を再確認
マンガやイラストなどのクリエイティブなコンテンツを扱うプラットフォームに対するクレジットカード業者の規制問題は、依然として大きな課題です。具体的な規制基準が曖昧であり、合法的なコンテンツまで巻き添えになっていることから、多くのクリエイターやプラットフォームが経済的なダメージを受けています。
さらに、規制の背後に誰がいるのかが不明確なため、効果的な交渉を行うことも難しい現状があります。
今後の具体的なアクション
規制問題の解決に向けて、クリエイターやプラットフォームは以下のようなステップを踏むことが考えられます。
- 情報の発信と共有
- SNSやブログを通じて規制の実態を発信し、世論を形成する。
- 規制による被害を受けている事例を集約し、問題点を明確化する。
- 代替決済手段の導入
- デジタルウォレットや仮想通貨などを導入し、クレジットカードに依存しない仕組みを作る。
- ユーザーに対して新しい決済手段を使うメリットを丁寧に説明する。
- 業界団体の結成と対話の推進
- 業界全体で協力し、団体を結成して交渉力を高める。
- 国際的な対話を行い、規制を緩和するための働きかけを進める。
クリエイターへのメッセージ
この問題は、クリエイター一人ひとりにとって深刻な問題ですが、業界全体で協力することで乗り越えられる可能性があります。単独での対応には限界がありますが、連携することで規制の問題を改善する力を生み出すことができるでしょう。
次のステップ
今後、以下のことを意識して行動することで、問題解決への道が開けるかもしれません。
- 規制問題に対して声を上げることを恐れない。
- 業界内での連携を強化し、協力して対策を講じる。
- 代替決済手段を積極的に導入し、ユーザーの利便性を高める。
この問題は長期的な課題になる可能性が高いですが、着実な取り組みを続けることで、少しずつ解決に向けて前進することができるでしょう。
この記事の活用法
本記事は、クレジットカード規制問題に関心を持つクリエイターやプラットフォーム運営者にとって、現状を理解し、今後の対応策を考えるための参考資料として活用できます。
また、同じ問題に直面している他の業界にも役立つ情報が含まれているため、広く共有することで規制問題を多くの人に知ってもらう機会を作ることができます。