日本クレジットカウンセリング協会(JCCO)が発表した2024年度の事業報告によると、同協会が運営する「多重債務ほっとライン」への電話相談件数は4,935件 に達し、前年度比6.9%増と2年連続で増加しました。新型コロナ禍で導入されたゼロ金利融資の返済開始や、生活費の補填を目的とした借入が増えていることが背景にあります。
本記事では、相談件数の増加傾向や相談内容の特徴、若年層の債務問題、そしてJCCOによる無料支援の仕組みについて詳しく解説します。
1. 相談件数の増加と社会背景
2024年度の電話相談件数は4,935件。新規カウンセリング件数は836件、延べカウンセリング件数は2,661件 となり、コロナ禍(2020~2022年度)に比べて明らかに増加傾向にあります。
JCCOの宮下洋事務局長は、自己破産件数や企業倒産の増加と並行して多重債務相談が増えている点を指摘。「ゼロ金利融資の返済が始まったことが家計を圧迫し、生活費のやりくりに困窮する世帯が増えている」と分析しました。
これまで「一時的な支援」で乗り切れていた人々が、返済フェーズに入ったことで根本的な家計見直しを迫られているのです。
2. 若年層に広がる債務問題
報告書によれば、相談者の年齢層では 20代・30代が半数以上 を占める結果となりました。これまで中高年層に多いとされていた多重債務が、若年層にも広がりを見せています。
背景としては以下の要因が考えられます。
- 不安定な雇用形態(非正規・フリーランス)の増加
- 収入減や転職に伴う生活費不足
- スマホやネットを通じた手軽な借入サービスの普及
- SNSや動画広告による情報商材や「楽して稼げる話」への誘導
若者の債務問題は将来的な生活基盤にも影響するため、早期の支援体制が求められます。
3. 相談内容の内訳と特徴的な変化
相談の借入目的では、例年通り「生活費補填」「失業・転職・収入減」「遊興・飲食・交際」が上位を占めました。
一方で、2024年度は以下の変化が注目されます。
- 男性のギャンブル関連債務が急増(22.9% → 30.8%)
- 女性では教育・資格取得のための借入が増加
- 悪質商法被害が2年連続で10位にランクイン
特にギャンブル関連については、オンラインカジノやスポーツベッティングといった新しい形態が要因として浮かび上がっています。
また、悪質商法については「闇バイト」「高額情報商材」などが挙げられ、消費者被害が借金問題と直結している実態が浮き彫りとなりました。
4. JCCOによる無料相談と支援の流れ
日本クレジットカウンセリング協会は、全国21拠点に相談室を展開し、消費生活アドバイザーなどの国家資格を持つ相談員が電話対応を行っています。
支援の流れは以下の通りです。
- 電話相談(多重債務ほっとライン)
- 借金の現状や不安を相談者が伝える
- 生活状況や収支の聞き取り
- 無料カウンセリング(弁護士+相談員の二人体制)
- 家計の見直し方法をアドバイス
- 任意整理が必要な場合は弁済計画を策定
- 任意整理の実行支援
- 債権者と交渉し、返済条件を調整
- 弁済契約締結後も返済完了まで伴走支援
このように「借りた後の生活再建」にまで寄り添う仕組みを持つのが、JCCOの大きな特徴です。
5. 自己破産や倒産増加との関連性
宮下事務局長は、自己破産や企業倒産の増加も同時に起きている点を懸念しています。返済猶予期間を経て債務が一気に表面化し、債務整理や破産に追い込まれるケースが増えているのです。
特に、若年層やフリーランスは生活基盤が脆弱なため、1度の失職や収入減で一気に返済不能に陥るリスクが高いとされます。こうした層に対する早期相談の促進は、破産を防ぐ有効策となります。
6. 消費者への呼びかけ
JCCOによると、相談者の約半数は行政機関や消費生活センターからの紹介によるものです。しかし依然として「どこに相談すればいいかわからない」「相談すると費用がかかるのでは」と不安を抱える人も多いのが現状です。
同協会は「無料で完済まで寄り添う支援をしていることを広く知ってほしい」と呼びかけています。特に多重債務を抱える人にとって、早めの相談が立ち直りの第一歩になるのです。
まとめ
- JCCOの電話相談件数は2年連続で増加、2024年度は4,935件に
- 背景にはゼロ金利融資返済の開始や生活費不足が影響
- 相談者は若年層が半数以上を占め、ギャンブル・教育費・悪質商法被害が増加傾向
- 無料カウンセリングや任意整理の支援により、完済まで伴走支援を実施
- 「早期に無料相談を活用すること」が再建のカギ
多重債務ほっとライン(JCCO)
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